不登校のキミへ 鴻上尚史が伝授する「嫌いな人」を好きにならなくて良い でも対立しない「コミュニケーション術」とは?

シリーズ「不登校のキミとその親へ」#8‐2 作家・演出家の鴻上尚史さん~学校の人間関係とコミュニケーション~

作家・演出家:鴻上 尚史

「コミュニケーションが得意」とはどういうことか?

もうひとつ勘違いしている人が多いのは、日本では「コミュニケーションが得意」というのは、誰とでも無難に仲良くできることだと思っている人が多い。

そうじゃないんです。どこに遊びに行くかを相談するにしても、友だちと意見が合わないことだってある。ぶつかったって、ぜんぜんいいんです。もめることは、ぜんぜん悪いことじゃない。

自分の意見を引っ込めて相手に合わせていたら、もめはしないかもしれないけど本当に仲良くはできません。「黙って相手に合わせたほうがラクじゃないか」と思った人もいそうですけど、それをやっていたら相手の要求はどんどんエスカレートしてくる。うわべの平和をたもつために、自分の意見を飲み込んで我慢し続ける毎日を送りたいですか。

「コミュニケーションが得意」というのは、意見がぶつかったときや相手ともめたときでも、どうにかうまくやっていける能力のことです。

自分のやりたいことをきちんと伝えて、相手の意見をしっかり聞いて、お互いに譲り合いながら、お互いがそれなりに納得できる結論を出せる力のある人が「コミュニケーションが得意な人」です。

そのときの話し合いを「対話」と言います。クラス行事でも部活でも、意見が合わないことってよくありますよね。

最近は「論破」というイヤな言葉が流行ってます。それをカッコいいと思っている人も少なくない。

論破して相手の意見をけ散らしたら、その瞬間はちょっと気持ちよくても、関係は完全に切れてしまう。繰り返していたら、周りから誰もいなくなってしまうでしょう。

違う意見に対してそんな反応しかできないのは、カッコよくもかしこくもありません。

論破は0か100かですが、対話の目的は、意見が異なる同士で51対49の落としどころを探ることです。どちらもマイナスを引き受けて、こっちの考えが通ることもあれば、通らないこともある。それは勝ちとか負けとかではなく「お互いさま」なんです。

もちろん、簡単ではありません。だけどコミュニケーションの技術が上達すればするほど、あなたは大切な相手と深くつながることができます。

スポーツと同じで、コミュニケーションも練習を重ねれば必ず上達します。ときにぶつかって悩むことがあっても、自分は今、貴重なトレーニングをしているんだと思ってください。

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