甘えてくる子どもへの「対応と役目」とは? 発達心理学の専門家が解説

発達心理学の専門家が育児に役立つアドバイスをおくる、こんなときどうする?「子育てQ&A」甘えへの対応編

教育学博士:渡辺 弥生

日々いろいろなことで奮闘している子育て世代に、発達心理学の専門家が、育児に役立つアドバイスをおくるコーナー「子育てQ&A」。今回はこれまでご紹介してきた中から、「甘え」に関するお悩みへの対応策をまとめてご紹介します。
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写真:Taka/PIXTA(ピクスタ)

「私にべったり。公園でもお友だちと遊ぶより、私と遊びたがります」(2歳・男の子)

子どもの発達の途中では、ママを心配させる行動がよくおきます。ママ離れができないのも、その一つ。今は大変ですが、立派に自立していける子です。納得いくまでママにべったりできた子は、安心してしっかり自立のステップを踏んでいくことができるのです。自立を焦って無理に突き放そうとするのは、むしろ逆効果になります。

後追いがひどくて、イライラするときは、逆に子どもをギュギュッと抱きしめて「大好き! ずっとくっついていようかな」などと、ユーモラスにいってみるのも方法です。子どもはあまのじゃくなところがあるので、「イヤ~」などと離れたがることもあるし、ママに受け入れられていることを感じて安心するでしょう。

「子どもの甘えにはどこまで応えたらいいの?」(3歳・女の子)

甘えをどう受けとめ、なにを制限するかという2つの基本的なルールをご紹介します。

実際の生活のなかでは、ご家庭の事情がありますから、いつも理想的な対応ができないのは当たり前ですが、少しでも心がけていくことができれば、子育てはうまくいくはずです。
「子どもが求めてきたら、好意的に応じる」

幼児期の子どもの「甘え」は、心のエネルギー補給。とくに親子の絆(信頼関係)が形成されていく時期にあたる、1~3歳では、子どもが求めてきたときは、むしろ積極的に好意的な応対をしてあげるというのが基本です。

もちろん甘えに応じられないことがあってもいいのです。ただ、短時間だけでもやさしい気持ちを子どもに向けてあげましょう。

たとえば、料理中に「だっこ~」と、まとわりついてきたときには、「ちょっとお味見する?」などといって、口に食べ物を入れてあげ、「待っててね。すぐにできるよ。甘いかな、辛いかな、おいしいかな~」などと楽しい言葉で関わってあげる方法もありますね。
「子どもの欲求を制限するのも親の役目」

好きなお菓子があるとします。子どもは「食べたい」という欲求しかなくて、適量も、食べる適切な時間もわかりません。そういうときでも「食べたいよね~」と一度は気持ちを受け止めてあげたいですね。

そのうえで、「食べすぎると、おなかが痛くなって晩ごはんが食べられなくなるから1個だけね」などと、理由を話してコントロールしていくのは親の役目です。1~3歳で制限が必要なのは、生活リズムを乱して健康に影響が出てしまうこと、人に迷惑をかける結果になることくらいです。そういうときは、子どものいいなりにならずに毅然とした態度をとりましょう。
写真:yasumy22/PIXTA(ピクスタ)

「最近、甘えがひどくなった気がして心配です。」(2歳・女の子)

子どもが自分からになにかをしてほしがったり、抱っこを求めたりするのは、けっして心配することではありません。とくに2歳ごろは知的な発達が進むので、ボンヤリしていた世界がだんだん見えるようになります。今までは平気だったことでも急に不安になって、パパママを求めることが増える時期ともいえます。

子どもの甘えに関しては、次のように考えて対応するといいでしょう。

・甘えOKのケース
十分に甘えさせて、「はい、がんばって、これをやってみよう!」と、さりげなく手伝ってあげれば、子どもは実力以上の力を発揮できるものです。子育ては「急がば回れ」。結果的に自立がスムーズに進みます。

・NGのケース
子どもが求めてもいないのに、親が先回りして手や口を出す「甘やかし」は極力避けましょう

・後追いがひどいケース
親との信頼関係を築いている途中の段階でよくおこります。心配はいらないので、家のトイレに入るときに「ママはここにいるよ」と声をかけてあげるような対応をしてみましょう。「ママはかならず戻ってきてくれる」という確信をだんだんともつことができて、この時期もすぐに卒業していきます。

今は、子どもの成長を応援していく時期。求めてきたときは、できるだけ受けとめながら、おおらかに接してあげたらよいでしょう。

「自分でできるのに『ママ、やって~』と甘えます」(3歳・男の子)

自立心が伸びるこの時期は、少し不安になって甘えたくなることがよくあります。しっかり受けとめてもらえると知って安心し、少しずつ成長の階段を上っていくのです。

子どもに求められてもいないときに手出しや口出しをして甘やかすのは問題ですが、子どもが甘えてきたときは、まずは受けとめてあげてください。

たとえば、食事を食べさせてほしがるなら、一口食べさせてあげて、「次は○○ちゃん、食べてみて」と誘い、「自分で食べるのが上手ね~。ママ、うれしいな」と、ほめてあげましょう。

親御さんに受けとめてもらって安心し、ほめてもらってうれしくなる……。これが子どもの成長のパワーになるのです。
子どもの成長エネルギーともいえる大切なものが好奇心や意欲は、ちょっとした対応で伸ばすことができます。

・好奇心を誘う環境を用意して、思いきり遊ばせる。

・子どもが行動するまえに、親が気を利かせすぎて手を出しすぎないように心がける。

・やりたがることは、できるだけやらせ、難しそうなら、さりげなく手伝い、達成感を味わわせる。

・出来栄えではなく、自分でやろうとした意欲をちゃんと認める。

・できずに泣いてしまったら、「次は、きっとできるようになるよ」と励ましの言葉をかける。
親御さんは子どものよきサポーターでありたいですね。

甘えてきたときはしっかり受けとめ、子どもが安心して次の好奇心に向かっていけるように、成長をバックアップしてあげてください。

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わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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