「不登校児」 親がやるべきこと・やってはいけないこと【専門家監修】 実体験や保護者への助言を〔全掲載〕
不登校を多角的視野で徹底取材 精神科医・小児科医・小学校教師・教育関係者など専門家の意見を網羅
2024.05.06
親がやってはいけないこと
不登校を見守る保護者の方は、どんなことに気をつければよいのでしょうか? まずはやってはいけないことを教えていただきました。
我が子が「学校に行きたくない」と言ったときに、「そっか。じゃあ休んでいいよ」と迷わず返せる親は、けっして多くないでしょう。しかし、不登校の子どもたちをさまざまな形で支援し続けている精神科医の松本俊彦先生は、「学校に行きたくないと言っている子どもを無理に行かせても、いいことは何もありません」と断言します。
若年層の自殺についての研究から、自殺を選んでしまった不登校経験者のなんと約75%の子どもが再登校していたという事実が判明したのです。「不登校になるより、はるかに深刻な問題は、周囲に合わせようとすることで心身が限界を超えてしまう『過剰適応』」と松本先生は語ります。その結果、うつや自殺のリスクが高まるのです。子どもが「休みたい」と言ったときは、かなり追い詰められている状態。迷わず休ませてください、と先生。
【学校休んだほうがいいよチェックリスト】
https://branchkids.jp/lp/oyasumi-checklist
公立小学校の教師であり、「先生の先生」として全国で講演活動もしている庄司寛之先生は、最近の不登校について、いじめや先生との軋轢などのはっきりした原因のない不登校児が増えていると語ります。
保護者の方にとってみれば、理由を探して、なんとか解決したいと考えるのも道理。ですが、庄司先生は、「お父さん、お母さんにしてみれば、『子どもが学校に行けないくらいつらいと言っているのだからきっと何か理由があるのだろう』と、理由を見つけようとして、どんどん子どもを追いつめてしまう。そういうことがきっかけに親子関係までも悪化していきます」と話します。
その行動は、学校との関係にもあまり良い影響がないかもしれません。庄司先生に子どもが不登校になったときに親ができる4つのことをうかがいました。
1.学校に行けない原因探しはしない
2.もし原因が見つかってもそれだけを信じない
3.子どもが行けない保護者の不満を学校にそのままぶつけない
4.子どもが学校に行けなくても親である自分を責めずのんびり構えている
親がやるべきこと
次に、親ができること、やるべきことはなにかを専門家のみなさんにうかがいました。
家庭でできることは「早寝早起き朝ごはん」、無理に学校に行かせようとするより、家庭で笑顔を増やすことが大切、そのためには親も変わる必要がある、と説くのは、小児科医・発達脳科学者として臨床と研究を重ねてきた成田奈緒子先生です。親が自分の時代の価値観で、よかれと思って子どもにやってきたことが、より子どもを追いつめていることもあるといいます。
学校へ行けず苦しんでいる子どもにまず親がすべきは、生活リズムを整えること、親の意識を変えること。「学校へ行くか行かないか」ではなく、生きる力を身につけることを目標に、「子育ては『心配』を『信頼』に変えていく旅」と語ります。
14年間の公立小学校勤務を経てフリーランスティーチャーとしてさまざまな学校で教師を務め、教員の働き方改革も進めている田中光夫先生は、子どもたちの価値観に大きな変化が起きていると語ります。
終身雇用ではなく速いテンポで仕事を変える働き方、またYouTubeやe‐スポーツ大会で活躍し、お金を稼ぐ方法など、多様な働き方を見るなかで、子どもたちは、学歴ではなく「手に職をつけたい」「やりたいことをやったほうがいい」と気づき始めていると話します。
「学校に行けない」のではなく、「学校に行かない」選択をする子どもたち。親も考え方をアップデートしたほうがよいのかもしれません。
不登校の相談先
文部科学省 子供のSOSの相談窓口
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
厚生労働省 不登校やいじめ、ひきこもりなどの相談窓口
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/window_02.html
学校に配置されているスクールカウンセラーに相談することもできます。
https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/life/ktOtF
学校や社会の取り組み
不登校の子どもたちを学校や社会で受け入れる取り組みも増えています。
2019年度に、『個別最適な学び担当』を新設した広島県では、県内の指定校で不登校などの児童・生徒への支援を目的に「スペシャルサポートルーム(SSR)」を始め、2022年4月には、広島県教育支援センター「スクールS」を新設しました。カラフルなソファが置かれた、学校とは思えないくつろげるスペースで、子どもたちは、通常学級の時間割りではなく、それぞれの時間割りで学ぶことができます。
「令和版駄菓子屋」シリーズでは、駄菓子屋を通して、不登校などの事情のある子どもたちを社会で見守る動きを取材しています。江戸川区が引きこもり支援の一環でスタートした区営駄菓子屋「よりみち屋」では、不登校の家庭と学校との橋渡しをすることも。
「地域をつなぐ みんなで育つ」シリーズでは、やはり地域で子どもを見守る活動を取材しています。川崎市が設立した「夢パーク」は、「ケガと弁当は自分持ち」の精神で、自由に遊べる禁止事項のないプレーパーク(冒険遊び場)と、学校に居場所を見出せない子どもや若者が集う「フリースペースえん」があり、いろいろな子どもや若者が遊びに来ます。最初は不満や不安の声もあった地域の方々も、いっしょに行事を行ったり対話を繰り返したりするうち、パークやそこに集まる子どもたちを応援してくれるようになりました。
「不登校」に関する記事をご紹介しました。これからもコクリコは、不登校のお子さんと保護者の方のための記事を取材・制作していきます。どうぞご注目ください。