
【ギラン・バレー症候群体験談】「体が千切れるような」激痛リハビリを乗り越えて授業を再開 人気家庭教師・小堀正博さんが語る回復への道のりと“当たり前ではない”日常への感謝
俳優・家庭教師 小堀正博さんのギラン・バレー症候群闘病記 ~後編~ (4/4) 1ページ目に戻る
2025.10.18
俳優・家庭教師:小堀 正博
「当たり前じゃない」と気づき世界への解像度が上がった
病気を経験したことで、季節の捉え方も変わり、目の前の世界への解像度が上がった。「2024年は、僕は病室にいて、桜が見られなかったんです」と小堀さんは振り返ります。
「人間って本当にいつどうなるのかわからない。月並みなんですけれど、なんでもかんでもありがたく感じて、本当に、世の中の全てに感謝するようになりました。
僕は、明治時代の歌人・正岡子規が詠んだ『いちはつの、花咲きいでて我目には、今年ばかりの、春行かんとす』という短歌が、すごく好きで。
この『生命力溢れた草花と季節の移り変わりに対して、去っていく春をもう自分がもう一度迎えることはできない』という悲しみが、今ではとっても身に沁みます」(小堀さん)

「僕たちは花見をしたら当たり前に、『来年もまた見に来よう』と言い合う。でも、いつどうなるかわからなくて、1分1秒を必死に生きている人が世の中にはたくさんいます。
病気の経験者として、『当たり前の今は、当たり前じゃない』ということを、保護者の方にはもちろんですが、今教えている生徒たちにも、それ以外の子どもたちにも伝え続けていきたいと思っています。
勉強ができることは当たり前じゃないんだよ、って」(小堀さん)。
「僕を救ったのは誰かの献血」 今、私たちにできること
病気を経験した小堀さんの目を通して、今の社会のあり方に感じることはあるのでしょうか。
「今の僕は、大きな病気を経験した人だなんて、見た目からはわからなくなりました。でも今でも末梢神経障害のため、駅のちょっとした階段を上るときに『キツイな』と感じることは少なくありません。
僕のように、目に見えない困難を抱えている人は世の中にはたくさんいます。それは身体的な障害だけでなく、精神的なことも含めて。
大変な思いをしている人に想いを寄せて、手助けできる自分でありたいし、そんな世の中にしていきたいと思っています」(小堀さん)

「例えば、目の前の人に異変を感じたら、空振りでもいいから、手を差し伸べてほしい。『大丈夫ですか』って。別に大丈夫だったら、それはそれでいいじゃないですか。
大人も子どもも、今より周りの人に対して少しでいいから敏感になって、見て見ぬふりをしがちな世の中が変わっていけるといいなと思っています。
そしてもうひとつ、献血への協力をお願いします。それまでは献血は、輸血にだけ使われるものだ、と思っていました。
これは退院した後で知ったのですが、僕の命を救ってくれた血液製剤は実は皆様の献血から作られていたんです。知らないどなたかが献血してくださったから僕は救われたんです。
ご自分でできることだけでいいと思います。子育て中は本当に忙しいし、手がまわらない方も多いと思います。余裕があるときに、周りに手を差し伸べてみる。
僕は助けていただいたことを、さまざまな形で次へつなげていきたい。そのひとつが家庭教師の仕事だと思っています。
勉強はもちろん、それ以外の悩みでも、子育て中のすべての家庭の力になれるよう、これからも活動を続けていきます」(小堀さん)
───◆─────◆───
想像を絶する過酷な闘病を経て、それを私たちへ伝えてくれた小堀さん。家族が元気で毎日過ごしていることは、当たり前ではない。それを日々忘れずに、どんなことでも大切に過ごしていきたいと改めて思いました。
取材・文/遠藤るりこ
小堀正博さんのギラン・バレー闘病の連載は全2回。
前編を読む。
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遠藤 るりこ
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe
小堀 正博
家庭教師、俳優。1988年生まれ、ワシントンD.C.出身。関西学院中学部・高等部を経て、関西学院大学法学部卒業。 中学受験生を中心に、小学生から高校生まで全科目に対応。オンラインでの家庭教師として絶大な人気を博す。高等学校教諭普通免許状一種(公民)、司書教諭所持。漢字検定・英検各2級。 2006年映画『かぞくのひけつ』で役者本格デビュー。現在も俳優としても活躍中。主な出演作にNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』『マッサン』『まんぷく』など。2025年秋上映の映画『長篠』では、武田勝頼役で出演。 2024年3月ギラン・バレー症候群を発病。約5ヵ月に渡る入院生活を経て退院。現在もリ ハビリを続けながら、オンライン家庭教師と俳優として活躍中。 https://www.maimupro.co.jp/profile/2316/
家庭教師、俳優。1988年生まれ、ワシントンD.C.出身。関西学院中学部・高等部を経て、関西学院大学法学部卒業。 中学受験生を中心に、小学生から高校生まで全科目に対応。オンラインでの家庭教師として絶大な人気を博す。高等学校教諭普通免許状一種(公民)、司書教諭所持。漢字検定・英検各2級。 2006年映画『かぞくのひけつ』で役者本格デビュー。現在も俳優としても活躍中。主な出演作にNHK連続テレビ小説『ごちそうさん』『マッサン』『まんぷく』など。2025年秋上映の映画『長篠』では、武田勝頼役で出演。 2024年3月ギラン・バレー症候群を発病。約5ヵ月に渡る入院生活を経て退院。現在もリ ハビリを続けながら、オンライン家庭教師と俳優として活躍中。 https://www.maimupro.co.jp/profile/2316/