地元で長ーく愛される本屋さんの秘密

「全国訪問 おはなし隊」が訪問してわかったこと

本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

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1981年創業と、43年の歴史を誇るセキグチ書店(茨城県古河市)。地方から書店がなくなるという暗いニュースも多いなか、同書店は古河市郊外のこぢんまりした書店ながら、長く地元から愛されてきました。

店内にはベビーサークルも設置された児童書コーナーもあり、絵本の著者やキャラクターを招いたイベントも積極的に行っています。

2024年11月23日、そのセキグチ書店さんを「全国訪問 おはなし隊」(主催:講談社)が訪問した様子をレポートします。そこには書店と地域の人々がともに育っていくヒントが詰まっていました

「読み聞かせ」会場に目立った大人の姿

「おはなし隊」がセキグチ書店さんを訪問するのは、今回で3回目です。最初の訪問は2002年、次が2018年でした。

コロナ禍で「おはなし隊」の活動を縮小せざるを得なくなった期間もありましたが、お店のスタッフの方が「ずっと『おはなし隊』のホームページで、茨城に来るのはいつかと訪問予定をチェックしていたんですよ」と教えてくれました。

絵本がズラッと並ぶセキグチ書店の児童書コーナー

いつもは幼稚園や小学校でお子さん相手に行うことが多い読み聞かせですが、セキグチ書店さんでの読み聞かせは、どうもいつもと様子が違います。

なにより目立ったのが大人の参加者が多かったこと。

なかには以前「おはなし隊」の活動にボランティアスタッフとして関わってくださっていた方や、関口よしこ店長から聞いて駆けつけたという、地元で読み聞かせ活動をされている方もいました(絵本の編集者を目指しているという大学生の方は、千葉の市川市から参加してくれました)。

今回の読み聞かせを担当した猪口まり子隊長もこう語ります。

「読み聞かせ活動に熱心な方が多くて驚きました。私も『読み聞かせで読むことが多い本はなんですか?』などと質問をいただいたり、キャラバンカーに積んでいる550冊の本のなかから、新しい絵本をご紹介したりしました」

キャラバンカーの本を熱心にチェックする大人の姿も

子どもたちに人気だった「ひよこ どこどこ」

そんな親御さんに連れてきてもらったお子さんたちも、大人に負けず劣らず読み聞かせを熱心に聞いてくれています。なかでも人気だったのが『ひよこ どこどこ』(作:やまだだり、講談社刊)。

カラフルな筒や箱の中から少しだけ見えている真っ白な「ひよこ」を探しては、「いた!」「見つけた!」と声が上がります。途中からは、

「ひよこ どこどこ」(真剣な表情で「ひよこ」を探す)

「ひよこ ここ」(筒や箱の中から「ひよこ」が登場して大歓声!)

と一緒に参加してくれました(関口店長のお子さんも、そのなかの一人でした)。

子どもたちに人気だった『ひよこ どこどこ』

リクエストに応えて、みんなで「バナーナ!」

『ひよこ どこどこ』と同様に、絵本に隠されたバナナを探すのが、『バナーナ!』(作:藤本ともひこ、講談社刊)。

こちらには普段、読み聞かせをしているという大人の方から「ぜひ読んでほしい」と猪口隊長にリクエストが。どのように読めば、子どもたちに関心を持ってもらえるか知りたかったようです。

「バナナ どこどこ? ここだよ!」というセリフの横には大きなゾウのお尻が描かれています。そして、ページをめくると……

大人のお客さんから「読み聞かせ」リクエストがあった『バナーナ!』

「バナーナ!」

振り向いたゾウの鼻に巨大なバナナ。

それからはページをめくるたびに、子どもも大人も声を合わせて「バナーナ!」。

子ども用スペースに込められた思い

なお、セキグチ書店さんが読み聞かせのために用意してくれたのは、店内にある小さなお子さん用のスペース。普段は、ここに絵本はもちろん、おもちゃや遊具が置いてあるといいます。

大型書店ではこうしたスペースが用意されているところもありますが、決して大きいとはいえない町の本屋さんで、売り場面積を削ってまで、お子さんのための遊び場を作っているところは少ないでしょう。

セキグチ書店さんの「小さいうちから本に慣れ親しんでほしい」という願いが込められたスペースなのです。

今回、読み聞かせ用にお借りした場所は普段、写真のような子ども用スペースとして開放

店長さんもお客さんも「親子2代」で

今年7月から父親の関口林さんの後をついで2代目店長になった関口さん姉妹同様、お客さんのなかにも親子2代で通っている方が少なくありません。

親に連れられてセキグチ書店を訪れ、絵本の楽しさに目覚めた子どもが、今度は親になってわが子を連れてくる。お店とお客さんの「付き合いの長さと深さ」は、この地に長く根付いてきた老舗ならでは、でしょう。

そういう老舗が、読書体験のスタートとなる「絵本」に力を入れることは、お客さんの世代を繫いでいくために、とても重要なことだと改めて感じました。

親子客の多さが、書店と地元の密着度を証明している

約1時間の訪問を終えた猪口隊長が振り返ります。

「車でたまたま通り過ぎたときに、キャラバンカーを見て興味を持って、わざわざ戻ってきて参加された方もいました。『おはなし隊』は普段、幼稚園や小学校を訪問することが多いので、こうした出会いは本屋さんを訪問したときならでは。貴重な体験でした」

今回の「おはなし隊」訪問が、これから長く続くセキグチ書店さんと地元のお客さんとの出会いのきっかけになったとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

本とあそぼう 全国訪問 おはなし隊とは
1999 年7月に、講談社創業 90 周年事業としてスタートした社会貢献事業。これまで2007年 第55回菊池寛賞、2018年公益社団法人企業メセナ協議会「MECENAT AWARDS 2018」 メセナ大賞、などを受賞しています。

普段は全国の幼稚園・小学校を巡回することが多い「全国訪問 おはなし隊」ですが、今回のように書店さんへの出張も行っています。近隣の都道府県に「おはなし隊」が来た際にお声掛けいただければ幸いです。

今後の訪問予定・応募要項などは「全国訪問 おはなし隊」ホームページに掲載しています。

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本とあそぼう 全国訪問おはなし隊

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai

たくさんの絵本を積んだ2台のキャラバンカーで各都道府県を巡回し、幼稚園、保育所、小学校や図書館、書店などを訪問している、「本とあそぼう 全国訪問おはなし隊」。1999年7月に、講談社90周年記念事業として、スタートしました。 2007年には第55回菊池寛賞、2018年には、メセナ大賞にも選ばれました。 スタートして以来、通算2万2000回以上の訪問、190万人を超える参加者のみなさん、ありがとうございます。次はあなたの町でお会いできるかもしれませんね! https://ohanashitai.kodansha.co.jp/ X(旧Twitter):@ohanashitai55 Instagram:@kodanshaohanashitai