寝ない 食べない 癇癪(かんしゃく)が多い… 「子どもが育てにくい」納得の理由とは? 専門家が「感受性」と「注意力」を使って分析

感受性と注意力で読み解く子どもの「困った」行動#1 感受性が敏感な子

感受性「外向き」タイプのよくある困りごとと対応策

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アンテナの受信の状態を変えることはできませんが、周囲の大人や保護者がその子の特徴に気づき、対応策を講じてあげることで、スムーズに生活できるようになります。

ここでは、外側の感受性が強いタイプの子に見られる行動で、野藤氏がよく相談を受けるものを取り上げ、その対応について解説していきます。

【ケース1】寝かしつけに時間がかかる
光や音が気になってなかなか眠れない状態です。眠りにつくとき、身体の働きとしては、体温や血圧が高まることなく穏やかにはたらきます。しかし、外から入ってくる物音や声、ちょっとした光を受け取っていると、緊張が高まることで身体が活発になり、結果としてなかなか寝つけません。

《対応方法》
「その子が視覚情報に敏感なら、部屋に光が入らないように工夫し、真っ暗にしてから寝かしつけましょう。寝る部屋だけでなく、周辺の部屋の電気も消すと効果的です。

音に敏感なタイプの子は、大人が『こんなに小さな音に気づくの?』というレベルも聞き取ります。玄関近くの部屋で寝ている場合は、家族が出入りする音に反応することもあります。そのため、寝かしつけている時間に帰宅する家族は、ドアの開け閉めの音や足音に気をつけたいものです。

就寝の前に夕食をとり、その後に入浴するなど、生活の流れを一定にすることも大切です。そのほうが保護者も見通しをもって家事を行うことができます。そしてこれは、互いに刺激し合うことを防ぎます」(野藤氏)

【ケース2】食べず嫌い、好き嫌いをする
子どもの好き嫌いの原因は、味(味覚)とは限りません。見た目(形)がどうしても受け入れられず食べられないという子もいます。また、特定の色の食べ物は受けつけない子もいます。

《対応方法》
「形や色が受け入れられない(食べられない)ことに、理由はありません。生まれ持った感覚なので、説明は不可能です。それを『わがまま』ととらえてしまうと、親も子もつらくなってしまいます。

食べないものが出てきたら、形が嫌なのか、色なのか、匂いなのか、はたまた味なのか、傾向を観察しつつ、その子の『受け入れられる範囲』を見つけていくとよいでしょう。成長とともにその範囲は広がることもありますが、まずは『食べることが楽しい』と思わないと、さまざまな食べ物にチャレンジしたいとは思いませんので、無理強いはしたくないですね。

また、残すときのマナーを教えてあげることも大切です。『まずい』『こんなの食べたくない!』などと言われると親も感情的になってしまいますから、『これは残したい』と子どもが親に尋ねることができて、親が『手をつけないでおこうね』など、話し合う手立てを教えてあげるとよいですね。

無理に食べさせる/食べさせられると、お互いイライラが募ります。親も子も納得できる方法を探っていきましょう」(野藤氏)

【ケース3】(保育園など集団行動で)突然、大きな声を出して部屋を出ていく
音に敏感な感受性を持っていると、他の子がにぎやかに遊んでいる声や音が刺激になることがあります。そうした子は、「うるさい」などと言ってその場を離れます。

《対応方法》
「本人にしてみたら、聞きたくない音が耳に入ってしまい、いたたまれずに部屋を出ています。自分でも大きな声を出していることに矛盾を感じるかもしれませんが、自ら声を発していると他の音を聞かなくてすむので、意識せずにしている行為なのです。

『勝手に出ていっちゃダメだよ』と注意しても大人の思いは伝わりません。こうしたことが続くようなら、園に聴覚が敏感であることを伝えて、それを踏まえた対策を考えるとよいでしょう。

最近では、『イヤーマフ』のように、ヘッドホンのような形状で防音するものもありますから、そうした機器を導入するのも一つの方法です」(野藤氏)

感情的なすれ違いを防ぐために

その他にも、感受性が影響している子どもの生活態度はたくさんあるといいます。

たとえば、遊んでいる子どもに「トイレにいったほうがいいんじゃない」と声をかけ、大丈夫と答えたにもかかわらず、その直後にもらしてしまうことがあります。

こうした行動について野藤氏は、「感受性が外側に向いている子は、『目に見えないこと』は認識しにくいのです。膀胱の状態は見えませんよね。だから、『行きたくない』『大丈夫』と答えますし、自分でもそう思っています。噓をついているわけではないのです」と説明します。

誕生日プレゼントにほしいと言ったおもちゃを買っても全然遊ばない……、というケースはどうでしょうか。

「『欲しいものを買ってあげる』と言われたけれど、どれにしていいかわからない。自分の中の『好き』や『楽しい』という目に見えない気持ちには、気づきにくいからです。

なかなか決められないと、保護者はよかれと思って『ブロック? それともこっちのパズル?』と選択肢を出します。早く決めないと……と焦って何となくパズルを選んだけれど、本当にパズルが好きなわけではないから買っても遊ばない。そんな状況です」(野藤氏)

一方的な決めつけは、親子関係に悪影響を及ぼします。 写真:yamasan/イメージマート

感受性が与える影響に親が気づかないままだと子どもへの不信感が募り、一方、子どもは親に不満を溜めていきます。

「理由がわからなければ、保護者は『うちの子はわがままばかりで我慢できない、もっと厳しくしつけなければ』と考え、子どもを𠮟ってしまいます。

ですが、感受性の影響で本人の意志とは関係ないと理解できれば、子どもを責めずにすみます。そして、対応策を講じることで、お互いの感情的なすれ違いを防ぐことができるのです」(野藤氏)

子どもに不可解な行動が出てきたら、その内側でどんなことが起こっているのかをよく観察し、対策につなげていくことを意識しましょう。

その上で、睡眠のリズムがとれない、食事量や内容に偏りが強くて心配、集団生活に慣れず指示された行動がとれない、そこへの参加をしぶる、といったことが続くようなら、子どもの発達を専門とする医師への相談も必要です。

「これらの行動は、子どもの心も身体もおびやかされて、保護者も対応に疲弊します。感受性は脳の働きの表れですから、医師を訪ねることも視野に入れてもいいでしょう」と野藤氏はつけ加えます。
※医師の受診時の注意点については第4回で解説。

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