整形外科クリニックで理学療法士として働く、武田純一先生。普段はリハビリテーションを専門に、関節の痛みや障害を抱えた患者のリハビリ指導を行っています。
武田先生は、あることをきっかけに2014年から理学療法士の仲間たちと「親子姿勢教室」を開くことになり、以来、子どもの姿勢についての正しい知識の情報発信に取り組んでいます。
“子どもの姿勢のプロ”といえる武田先生にお話を伺いながら、姿勢の悪さが子どもの心身に与える影響や、姿勢改善の方法、靴やサポートグッズの選び方などをご紹介します。
第1回は、武田先生が子どもたちの姿勢に注目することになったきっかけと、姿勢が悪いとどんな悪影響があるのかを教えてもらいました。(全4回中1回目)
30秒もまっすぐ立てない子どもたちに危機感を覚えた
ランドセルメーカー大手のセイバンが行った調査(※1)によると、「子どもの姿勢が気になる」と返答した保護者が全体の9割にのぼりました。
※1=子どもの姿勢の実態とランドセルに関する調査
そのなかで、「(姿勢が気になっているものの)しかし対策はできていない」が7割を超えるという結果に。小学校入学前の段階で、約5人に1人の保護者が「我が子は姿勢が悪い」とまで感じています。
多くの親が心配している子どもの姿勢。武田先生は医療現場での経験を通じて、問題意識を抱くようになったといいます。
「大学卒業後に整形外科クリニックで勤務をはじめたところ、身体の痛みや不調を訴える子どもたちと多く接することになったんです。
スポーツ障害(※2)ならまだしも、肩こりや腰痛など、大人が悩まされているような痛みを訴える子が多いことが気になりました。
疾患として名前がつかない痛みを抱える子たちに、理学療法士の立場からどうにかしてフォローしてあげる方法はないのだろうかと考えるようになりました」(武田先生)
(※2)スポーツ障害=スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害
武田先生がそんな子どもたちと向き合ってみてわかったのが、みな共通して「姿勢が悪い」ということでした。
「痛みを抱える子たちに『姿勢を正してまっすぐ立ってみて』とお願いすると、みんな30秒も良い姿勢を保てなかったんです。最初はまっすぐ立つのですが、すぐにぐちゃっと姿勢が崩れてしまう。これには驚きました。
もともと私は、肩こりや腰痛など、大人たちが抱える慢性痛に向き合ってきました。慢性痛の原因はいろいろありますが、姿勢もひとつの要因。
姿勢が悪いままでは、子どもたちが痛みを抱えたまま人生を過ごすことになると、強い危機感を覚えました」(武田先生)
そこで武田先生は、理学療法士の仲間たちと、任意団体を立ち上げることに。足立区のNPOセンターに登録し、子どもたちに向けて「姿勢教室」を開くことにしました。
「私たち理学療法士の元にリハビリのオーダーがくるのは、痛みがある子に限られます。痛みを感じて病院へ駆け込む前に、姿勢についてもっと正しい知識を持ってほしいと思ったんです」(武田先生)