【漢方の専門医が教える】子どもに処方される「漢方薬」との上手な付き合いかた

漢方医学は古くから親子関係に着目していた  親子のための漢方医学レッスン #2

風邪には「葛根湯」と聞くけれど……実は注意も必要

風邪の引き始めには「葛根湯(かっこんとう)がいい!」という話はよく耳にします。とはいえ、万人に適した薬とはいえません。

「基本的に薬というものは、飲む人の体質や既往歴によって合う/合わないがあります。西洋医学で処方される薬も同じですが、特に漢方薬では重要なポイントになります。体質に合わない薬は効果が出ないばかりか、逆に体調を壊す可能性すらあります。

葛根湯は元来、元気がそこそこある人で寒気が強く、また発汗していない風邪の初期に選択される漢方薬です。ですから胃腸が弱くて気虚の傾向が強く、寒気を感じながらじわじわ発汗しているような人の風邪の初期には選択されません。

また、葛根湯には「麻黄(まおう)」という生薬が主役として配合されますが、麻黄には興奮作用があるため、熱性けいれんを経験している子どもには注意が必要です。

さらに、心臓に持病がある方にも影響がありますので、漢方医学を修めている医師は処方を控えます」(草鹿砥先生)

葛根湯(かっこんとう)
味:やや辛味

服用方法:お湯に溶かして温服

注意事項:体を冷やすことを控える。胃弱な方、熱性けいれんを経験している子ども、心臓に持病がある方は服用を控える

周囲がこの薬が効くといっても、子どもの体質と持病によっては悪影響が出ることもあります。これは大人の場合も同様です。従って、病院では医師に薬を服用する対象者の体質や既往歴を伝えることは重要です。

また、薬局では多くの漢方薬が市販されており、たやすく手に取ることができますが、購入する場合も注意が必要です。

漢方薬を薬局で買うときのポイント

現在、多くの薬局で漢方薬が市販されています。しかし、下痢をしやすかったり、胃腸が弱かったり、あるいは持病があるなどの場合は購入には慎重になったほうがいいでしょう。

薬を初めて購入するときはもちろんのこと、過去に病院で同名の漢方薬を処方されたことがあっても、薬剤師に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。

特に後者の場合、すでに病院から処方されて服用したことがある漢方薬ではありますが、病院と薬局で購入する漢方薬は、名前は一緒だけれど、生薬の分量が違う可能性もあります。

例えば葛根湯の場合、麻黄という生薬が使われており、これが心拍数を上げて発汗を促します。病院で処方された漢方薬と薬局で購入したものでは麻黄の分量が違う可能性もあり、分量が違えば体に影響することも考えられます。

漢方薬を購入する場合は、薬剤師に相談と確認をすることが大切です。

西洋医学の薬も漢方薬も、薬は飲む人の体質や既往歴によって合う/合わないがあります。市販の薬は薬剤師に相談してから購入しましょう。 写真:アフロ

漢方薬の副作用への対処について

漢方薬というと「副作用」という言葉もよく耳にします。漢方薬を本やネットで調べると副作用の説明がされており、注意が必要なことがわかります。

副作用については、どのような注意や対処をすればいいのでしょうか。

「どんな薬でも、そして漢方薬にも副作用があることは承知してください。とはいえ、薬を飲んでそれが副作用かどうかは一般の方には判断が難しいでしょう。

例えば子どもに薬を与えて吐いてしまった場合、これが副作用なのかどうかは親御さんでは見極められるでしょうか。

漢方薬は基本的に美味しいとはいえませんから、もしかしたら口に合わなくて吐いただけかもしれませんし、ただ吐いただけと思っていたら、実は生薬の成分がアレルギー性の副作用を引き起こしたとも考えられます。

では、副作用に対してどうすればいいのかというと、親御さんはお子さんに少しでも不都合なことが起こったり、心配になったりした場合はすぐに担当医に連絡をしてください

漢方薬を処方するとき、担当医はこんな症状が出たら……など、薬の説明をするはずですが、その症状に該当していなくても不安を感じたら相談するといいでしょう。

特に小児科医は処方後のケアも行うのが本分ですから、親御さんが困ったことがあれば連絡してOKです」(草鹿砥先生)

副作用については心配なものの、こういう症状が出たら……、こんな様子が見られたら……と身構えたり考えたりするよりも、不安に思ったら医師に連絡することが先決です。

診療後に自宅から担当医に連絡するのを躊躇する方もいますが、草鹿砥先生は小児科医についてはそういったケアは診療の一環だといいます。フォローがあるとわかると一層、安心して漢方医学の恩恵を受けられるでしょう。

次回は子どもに漢方薬を飲ませるときのとっておきのワザや、漢方薬の効果を最大限に引き出す方法などを紹介します。また、草鹿砥先生の実際の診療例もお届けします。

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草鹿砥 宗隆(くさかど むねたか)
小菅医院・横浜朱雀漢方医学センター勤務、現副院長。日本小児科学会専門医。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。日本小児科医会(子どもの心相談医)、日本小児内分泌学会、日本小児東洋医学会所属。山梨医科大学小児科学講座、聖マリアンナ医科大学小児科学講座を経て、2007年から現職。東邦大学医療センター佐倉病院漢方診療科客員講師、2022年4月から横浜市金沢区の青木こどもクリニック、はまかぜこどもクリニックの非常勤医師として小児科診療に携る。5施設の保育園嘱託医。

【主な共著や監修書】
『こども漢方』(源草社)


取材・文/梶原知恵

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くさかど むねたか

草鹿砥 宗隆

Munetaka Kusakado
小児科医・漢方専門医

小菅医院・横浜朱雀漢方医学センター勤務、現副院長。日本小児科学会専門医。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。日本小児科医会(子どもの心相談医)、日本小児内分泌学会、日本小児東洋医学会所属。 山梨医科大学小児科学講座、聖マリアンナ医科大学小児科学講座を経て、2007年から現職。東邦大学医療センター佐倉病院漢方診療科客員講師、2022年4月から横浜市金沢区の青木こどもクリニック、はまかぜこどもクリニックの非常勤医師として小児科診療に携る。5施設の保育園嘱託医。 【主な共著や監修書】 『こども漢方』(源草社)

小菅医院・横浜朱雀漢方医学センター勤務、現副院長。日本小児科学会専門医。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。日本小児科医会(子どもの心相談医)、日本小児内分泌学会、日本小児東洋医学会所属。 山梨医科大学小児科学講座、聖マリアンナ医科大学小児科学講座を経て、2007年から現職。東邦大学医療センター佐倉病院漢方診療科客員講師、2022年4月から横浜市金沢区の青木こどもクリニック、はまかぜこどもクリニックの非常勤医師として小児科診療に携る。5施設の保育園嘱託医。 【主な共著や監修書】 『こども漢方』(源草社)

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。