「コンドームの使い方」を高校生全員に教える 離島の産婦人科医の「性教育」の中身とは?

産婦人科医・小徳羅漢先生に聞く、本当に役に立つ「性教育」 #1 ~奄美大島の高校での取り組み編~

産婦人科医・総合診療医:小徳 羅漢

コンドームを正しく装着するのは難しい

小徳先生:多くの人が何となくコンドームを使っていると思いますが、実はコンドームを正しく装着するのは難しいんですよ。

コンドームは、正しく装着できれば約98%の避妊効果がありますが、誤った付け方だと避妊の成功率は約70%にまで低下してしまいます。

生徒たちには、実際に使うときは、裏表を正しく確認してから先端をつまんで空気を抜くこと、一度根本まで下ろしてから皮と引き上げて再び下ろすことで、コンドームと皮が一体化して脱落しにくくなることなどを解説しました。

「教えてもらえてよかった」と学生

──学生の反応はどうでしたか?

小徳先生:想像よりもずっと歓迎されて、私が驚きましたね。女子学生のアンケートでは、「コンドームは、自分には関係がないと思っていましたが、自分を守るために大切なものだと分かりました」と寄せられていて、本当にやってよかったと思いました。

また、娘が学校で性教育を受けたお母さんからも「最初は驚いたけれど、大切なことなので学校で教えてもらってよかった」と感謝されました。

性教育の様子。「高校生全員にコンドームを配って実演してもらいました」(小徳先生)。  写真提供:小徳羅漢

「性教育」は自分と大切な人を守るもの

──性教育を通して伝えたかったことは何ですか?

小徳先生:性教育の「性」とは「心に生きる」と書きます。つまり、愛を持って生きるための教育なのです。セックスやコンドーム、月経、性感染症などの話は、すべてそのための一部。性教育では、根本にある愛を持って生きること、そのために自分と大切な人を守ることが必要だということをまずは伝えたいです。

性教育で使うスライドに載せたメッセージ。  写真提供:小徳羅漢

小徳先生:今回、奄美大島にある4つの高校すべてで性教育の講演をしましたが、これはきっかけの一つに過ぎません。また、私一人でできることは限られています。講演会には地域の保健師さんや助産師さんも見学に来てくれたほか、学校の先生たちも非常に興味を持って熱心に協力してくれました。

奄美大島での取り組みを発信していくことで、少しずつ日本全体で本当に子どものための性教育が広がってほしいと願っています。

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小徳先生の「性教育は、愛を持って生きるための教育」という言葉が響くインタビューでした。すべての子どもたちが正しい知識を持ち、望まない妊娠や性感染症などにかかることがないように、奄美大島の取り組みが全国へ広がることを願ってやみません。

2回目では、我が子を性のトラブルから守るために自宅で行う性教育について、引き続き小徳先生にお伺いします。

取材・文/横井かずえ

小徳羅漢先生の性教育インタビューは全2回。
2回目を読む。
※2024年10月10日公開。公開時よりリンク有効。

参考資料
政府広報オンライン「梅毒患者が急増中!検査と治療であなた自身と大切な人、生まれてくる赤ちゃんを守ろう」
https://www.gov-online.go.jp/article/202403/entry-5789.html

国立感染症研究所「感染症発生動向調査で届け出られた梅毒の概要」
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/syphilis/2024q2/syphilis2024q2.pdf

33 件
ことく らかん

小徳 羅漢

Kotoku Rakan
産婦人科医・総合診療医

産婦人科専門医・総合診療医。 1991年、茨城県生まれ。小学校高学年から神奈川県で暮らす。2016年、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業後、鹿児島市医師会病院で初期臨床研修。2018年は長崎県上五島病院、2019年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。 2020年~現在は鹿児島県立大島病院に勤務。 病院勤務以外に、街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催。 2018年に結婚、2020年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2児の父。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。 @rakankotoku

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産婦人科専門医・総合診療医。 1991年、茨城県生まれ。小学校高学年から神奈川県で暮らす。2016年、東京医科歯科大学(現・東京科学大学)卒業後、鹿児島市医師会病院で初期臨床研修。2018年は長崎県上五島病院、2019年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。 2020年~現在は鹿児島県立大島病院に勤務。 病院勤務以外に、街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催。 2018年に結婚、2020年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2児の父。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。 @rakankotoku

よこい かずえ

横井 かずえ

Kazue Yokoi
医療ライター

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2

医薬専門新聞『薬事日報社』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2013年に独立。 現在は、フリーランスの医療ライターとして医師・看護師向け雑誌やウェブサイトから、一般向け健康記事まで、幅広く執筆。取材してきた医師、看護師、薬剤師は500人以上に上る。 共著:『在宅死のすすめ方 完全版 終末期医療の専門家22人に聞いてわかった痛くない、後悔しない最期』(世界文化社) URL:  https://iryowriter.com/ Twitter:@yokoik2