
「ボロボロでも一緒にいたい」人形を研究する早大准教授が「ぬいぐるみを愛でる」のは未来志向な行為だと断言する理由
写真集『ずっと、だいすき。ぬいぐるみ専門病院から帰ってきた家族たち』第5回
2025.05.16
ライター:山口 真央
ぬいぐるみを愛することは世界を1つ増やすこと

菊地 ひと昔前はぬいぐるみは子どものおもちゃでしたが、いまはぬいぐるみと旅行に出かけたり、写真を撮ったりする「ぬい活」が流行って、大人もオープンにぬいぐるみ愛を語れるようになりました。
箱崎 クリニックにぬいぐるみを預けてくださる方も、老若男女いらっしゃって、ぬいぐるみとの思い出をたくさん教えてくださいます。ぬいぐるみは人にとって、どんないいことをもたらすと考えますか。
菊地 ぬいぐるみを大事にしている人は、世界を1つ多く持っている人です。ぬいぐるみを尊いものとして扱うことで、持ち主さんとぬいぐるみだけの思い出が紡がれます。
それは一見、内向きに感じますが、じつはぬいぐるみに助けてもらって自分を前向きに整えている。ぬいぐるみを大事にすることは、明日を元気に生きるための未来志向な行いだと思います。
箱崎 この写真集に掲載しているぬいぐるみの持ち主さんも、明日をポジティブに生きるために、ぬいぐるみの力を借りていると感じました。持ち主さんとぬいぐるみとの唯一無二のエピソードには、いつも感動させられます。
菊地浩平
埼玉県鴻巣市生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)、白百合女子大学人間総合学部児童文化学科准教授等を経て、現在は早稲田大学文化構想学部表象・メディア論系准教授。2019年に一般社団法人日本人形玩具学会学会賞、早稲田大学ティーチングアワード総長賞を受賞。著書に『人形メディア学講義』(河出書房新社)、『こころをよむ人形と人間のあいだ(NHKシリーズ)』(NHK出版)がある。
箱崎なつみ
宮城県仙台市出身。ぬいぐるみ専門病院杜の都なつみクリニック院長。祖母から針仕事をおそわり、18歳で服飾の専門学校へ入学し、洋裁を学ぶ。卒業後、洋服のお直し屋さんに就職し、ぬいぐるみの治療をする過程で、ぬいぐるみを家族として迎えている持ち主さんに心打たれて、ぬいぐるみ専門病院を開設する。これまで治療したぬいぐるみは1万8000体。丁寧なカウンセリングと高い技術で人気が高い。海外からのお客様も多く、2025年にシンガポールでの出張診察会を開催。
もっとインタビューが読みたい人は「ぬいぐるみ専門病院の写真集」をチェック!

NHK「あさイチ」、日テレ「ヒルナンデス」「月曜から夜ふかし」など50メディアが取材した、ぬいぐるみ専門病院「杜の都なつみクリニック」がはじめての写真集を出版します。
その名も『ずっとだいすき。 ぬいぐるみ専門病院からかえってきた家族たち』。病院にやってきた40のぬいぐるみの、治療前と後をおさめた写真集です。
治療前のボロボロの姿も、治療後のふわふわの姿も、どちらも愛おしい! ぬいぐるみ好きにはたまらない、とっておきの一冊です。

ビフォーアフターの写真に加え、ぬいぐるみと持ち主の出会いや日常のヒストリー、持ち主のカウンセリングを経て施したスペシャルな治療内容も収録。「ぬいぐるみは、お守りのような存在」、「単身赴任の夫と私をつなぐ、心のよりどころ」など、ぬいぐるみと持ち主のエピソードが心を和ませます。
さらに「ぬいぐるみを愛する人」として俳優・美村里江さんが登場! ぬいぐるみとの心温まるエピソードや、箱崎院長によるぬいぐるみの健康チェック、自宅で簡単にできるぬいぐるみのケア方法なども掲載しています。
スターチャイルド代表の長谷川孝博さん、人形文化研究者の菊地浩平さんとの対談も収録。ぬいぐるみ好きにはたまらない、唯一無二の写真集は、2025年5月28日に発売です!
ぬいぐるみ写真/嶋田礼奈(講談社写真映像部)
山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。