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『あらしのよるに』【全7巻 全ページ試し読み】380万部の国民的ベストセラー 20年ぶり“奇跡“の新シリーズが3月12日スタート! 『あるはれたひに』を全ページ無料公開!
「あらしのよるに」シリーズより『あるはれたひに』を全ページ無料公開!
2025.02.18
「わ、わたし、かみなりが いちばん きらいで。」
「お、おいらも なんすよう。」
ゴロゴロゴロ~!!
「きゃっ。」
「ひえっ。」
かみなりの おとが なりひびくと、二ひきは ひしと だきあった。
すると オオカミの あたまの なかが、ヤギの おいしい においで いっぱいに なる。
そこで ぐうう~と はらが なる。
ゴロゴロゴロ~!!
「ひゃあ!!」
ひしっ。
オオカミの はらが ぐうう~。
ゴロゴロゴロ~!!
「ひゃあ!!」
ひしっ。
オオカミの はらが ぐうう~。
なんど これを くりかえしたことだろう。
やがて あまぐもが さり、くもの きれまから ゆうぐれの ひざしが さしはじめる。
どうくつの なかが しんと しずまりかえった……と、そのときだ。
ギャア~
ヤギの けたたましい ひめいが、どうくつの そとまで ひびきわたった。
「ウウッ、ウ~!!」
とぎれとぎれに きこえる ヤギの うめきごえ。
そして、チャカ、チャカと、オオカミだけの あしおと。
やがて どうくつの でぐちに、オオカミが すがたを あらわした。
「ったく だめじゃないすか、あんなところで けっつまずいて。」
「いやあ、こんなことまで してもらって、もうしわけない。」
オオカミに せおわれながら ヤギが てれくさそうに わらう。
ただでさえ けわしい いわやまを、オオカミは ヤギの おもさと すきっぱらを こらえて、いっぽいっぽ おりていく。
「おいらが いたから いいようなものの、きを つけてくださいっすよ。」
「わたし、むかしっから そそっかしくてね。ほんとに もうだいじょうぶです。
ありがとう。あっ、もうすぐ わかれみちですね。」
オオカミは へんじを せず、そっと ヤギを おろした。
二ひきが やっと いわやまを おりたころには、もう ゆうひが しずみかけていた。
「じゃあ、わたしは こっちですから。」
ヤギが てを ふった。
オオカミは だまって みおくった。
ぐううと はらが なる。
すこし かえりかけた オオカミは、たちどまって ヤギを ふりかえる。
ぐうう。
はらが また おおきく なった。
「こんなの……やっぱり……がまんできねえ。」
ヤギを じっと みつめていた オオカミが、いきなり はしりだした。
かんたんに ヤギに おいつくと、オオカミは おおきな くちを がばっと あけて……。
しんこきゅうすると こう いった。
「ねえ、ひとつ、だいじなことを わすれてたんすよ。」
「えっ、なんでしたっけ?」
ヤギが ふりむく。
「もう、じれってえなあ、だからあ……。」
オオカミは ふいに したを むいて、ポツリと ちいさく いった。
「こ、こんど、いつ あうっす?」
おかの うえの ふたつの かげが ひとつに つながって、どこまでも のびていた。
……『大型版 あらしのよるにシリーズ(3) くものきれまに』へと続きます!