「どうする? 上の子の対応」けんかの止め方やフォローなどを発達心理学の専門家が解説

発達心理学の専門家が育児に役立つアドバイスをおくる、こんなときどうする?「子育てQ&A」きょうだい編

教育学博士:渡辺 弥生

日々いろいろなことで奮闘している子育て世代に、発達心理学の専門家が、育児に役立つアドバイスをおくるコーナー「子育てQ&A」。今回はこれまでご紹介してきた中から、「2人目を妊娠したときの上の子のケア」や「きょうだいげんか」に関する悩みへの対応策をまとめてご紹介します。
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「2人目が生まれることを、上の子にどう教えたらいい?」(3歳・男の子ママ)

ママが下の子を妊娠すると、上の子のなかには不安を感じる子がいます。子どもは何歳になっても、親から「あなたが大事。大好き。あなたがいてくれてうれしい」という心からのメッセージをもらえることが最高の喜びです。少し意識して愛情深く接するようにしてあげたいですね。

下の子の妊娠を教えるとき、「いいお兄ちゃん(お姉ちゃん)になろうね」というのでは、プレッシャーがかかります。

ポイントは、上の子に「きょうだいができる」というワクワク感をもたせてあげること。

「赤ちゃんが生まれる」と話すときには、「あなたもママのお腹にいたのよ。そのときすごくうれしかったよ。ママはあなたが大好きよ」などと、上の子が大事だということをメインにして伝えるようにしていきたいもの。

胎動が始まったら、上の子の手を優しくとってママのお腹をさわらせて「動いているね」「あなたも元気いっぱい動いていたのよ」などと話しながら、小さな命を感じさせてあげましょう。「赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみね」などと話したり、関連する絵本を読んであげたりするといいでしょう。

「2人目出産。上の子がさびしい思いをしないかと不安」(3歳・女の子ママ)

出産後しばらくすると、上の子が赤ちゃん返りをすることがありますが、不安に思うことはありません。自分にもっと関心を示してほしいというサインですから、そこをおさえて対応していけば、一時的なもので終わるからです。

出産後は、上の子をママの右腕のような存在で扱っていくのがおすすめ。「おむつを持ってきてくれて助かるな。ありがとね」「泣いてるから、一緒にヨシヨシしてあげよう」など。

そして、意識的に「あなたが大事」という言葉がけや、下の子が寝ているときなどに、抱っこをするなどの愛情表現をしてあげましょう。

また、子育てサポートのサービスについて調べておくと、困ったときの助けになります。出産後、上の子はパパ、下の子はママという分担をするケースをよく見ますが、上の子だってママが大好き。家事の分担など、夫婦でよく話し合って準備さえしておけば、二人目出産にも安心してのぞめるでしょう。
上の子、下の子の関係を良好に保つには?
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「2歳の下の子が3歳の上の子をじゃましたり、ものを取ったりします。どう関わればいいのでしょう?」(男の子ママ)

幼児期は、まだ自己中心的な時期なので、けんかは当たり前です。

「年上なんだから」と上の子を𠮟るのではなく、年上の子の苦労や立派さに理解を示し、「花をもたせ」ながら、下の子を思いやれるようなアドバイスができたら最高です。

たとえば、上の子には、「○○ちゃんは大きいからわかっているけど、(下の子は)小さいからわからないのよ。許してあげてね。貸してもいいときに貸してあげると喜ぶよ」。

下の子には、「(上の子が)遊んでいるからダメよ。これで遊ぼうね」などと伝えられるとベストです。機会があれば、「順番こ」のルールを教えてもいいですね。

毎回でなくていいので、互いの気持ちや事情をママが代弁してあげると社会性の育ちにつながります。まだ教えてもわからないと思うでしょうが、今の時期から伝えていけば、それが子どもに染みこんでいきます。

「1歳前の下の子を抱っこしながら、上の子を砂遊びさせるのが大変。室内ばかりになって、上の子がかわいそうな気がする」(3歳・女の子)

ママも生身の人間。大変なときは、家の中で十分に遊ばせてあげるだけでも大丈夫です。

「子どもに外遊びをさせなくちゃ!」などと、ママが無理をしすぎるのは、かえってマイナス。「~しなければいけない」という縛りこそが、ママの大敵なのです。

1~3歳は、きょうだい育児の大変さのピークともいえます。ずっとこのまま続くわけではありません。しばらくすれば、きょうだい同士で助けあったり、いたわりあったりできる年齢に成長していきます。

地域の子育てサービスを調べたり、ママ友同士で助けあう相談をしたりして、子育てSOSメモを作っておくと、いざというときに役立つでしょう。公的なもの、私的なものなど、積極的にだれかの手やシステムを借りることを考えましょう。

「けんかをしているときの声かけの仕方、タイミングなどを知りたい」(3歳・男の子ママ)

声をかけるのは、最初から止めに入るのではなく、お互い意見をぶつけている段階は、子どもの考えを知るいいチャンスです。手が出そうになるときは止めましょう。声かけも「やめなさい」ばかりではなく、「なぜけんかしたの?」とそれぞれの意見を聞くことが大事。

よくあるおもちゃの取り合いなどは「まだ遊びたいのに取られて悔しかったんだね」「早く遊びたいのに、いつまでも貸してくれなかったんだね」など、けんかの原因をそれぞれに考えさせます。

その後に解決策を考えさせ、「次は貸してあげられるといいね」「待てるといいね」などと、アドバイスします。

どちらが正しいかではなく、問題の解決の仕方に導いていくこと。けんかこそ学びの場ととらえ、大らかに接していきましょう。
きょうだいがいるメリットとは?
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「きょうだいげんかのとき、つい上の子を叱ってしまいます」(2歳半・女の子ママ)

弟妹のほうが小さいからといって、一方的にかばうのはあまりよくありません。親はつい下の子の視点に立ってしまいがちですが、言葉や状況をより理解している上の子の立場にたつことが大切です。

上の子と2人きりのときに「小さい子はわがままを言うし、できないことも多いから、あなたは大変だよね。がんばっているね。でも、がまんできないみたいだから、ゆずってあげられるといいね」と言葉にして伝えましょう。

「お母さんやお父さんは自分の気持ちをわかってくれている」「自分を愛してくれている」とわかれば、下の子への態度も変わるはずです。上の子が子育ての味方になってくれると、心強いですよ。

「子どもが3人いますが、けんかばかりで困っています」(3歳・女の子ママ)

3人きょうだいでも、全員の言い分を聞いて、冷静にアドバイスをするというプロセスは同じです。

普段から「三人寄れば文殊の知恵」や毛利元就(もうりもとなり)の「三矢(さんし)の教え」など、「3人いるメリット」を会話や絵本を通して伝えるのもいいかもしれませんね。

けんかは「自分の要求が通らないことがある」と知る、社会を学ぶいい機会。親はきょうだいげんかを通して、それぞれに何を学ばせたらいいか、日頃から考えておくことが大切。

良い子か悪い子かを決めるのではなく、全員の学びにつながるように、見守っていきましょう。
きょうだいに関する大切なポイント
・「きょうだいができる」というワクワク感をもたせる
・親は「〜しなければならない」という考えをやめる
・けんかはどちらが正しいかではなく、解決の仕方に導く
・上の子の立場にたつことが大切
・きょうだいがいるメリットを伝える

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わたなべ やよい

渡辺 弥生

教育学博士(発達心理学、発達臨床心理学)

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

大阪府生まれ。1983年筑波大学卒業。同大学大学院博士課程心理学研究科で学んだ後、筑波大学、静岡大学、途中ハーバード大学客員研究員を経て、法政大学文学部心理学科教授。同大学大学院ライフスキル教育研究所所長兼務。教育学博士。専門は、発達心理学、発達臨床心理学。主な著書に『まんがでわかる発達心理学』、『11歳の身の上相談』(講談社)、『親子のためのソーシャルスキル』(サイエンス社)など。

げんきへんしゅうぶ

げんき編集部

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「いないいないばあっ!」と、幼児向けの絵本を刊行している講談社げんき編集部のサイトです。1・2・3歳のお子さんがいるパパ・ママを中心に、おもしろくて役に立つ子育てや絵本の情報が満載! Instagram : genki_magazine Twitter : @kodanshagenki LINE : @genki

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