【パパママの予習】子どもに「性の多様性」をどう伝える? 専門家の助言&玩具・英語・水着 こんなに変わった!

ジェンダーや「性の多様性」に関する反響記事“まとめ”6選

ライター:畑 菜穂子

子どもに「性の多様性」を伝えることがなぜ大切なのか。改めてその意味、子どもへ伝える手段もわかる記事をまとめました。  イメージ写真:アフロ
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“これから”の子どもたちには「性の多様性」を伝えたほうがいい。でもどうやって? パパママの戸惑いを解消するため、さまざまな有識者の知見を集めました。

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近年、性別にとらわれない考え方を意味する「ジェンダーニュートラル」や「性の多様性」などの言葉を耳にする機会が増えてきました。しかし、同性婚の法制化がなかなか進まなかったり、トランスジェンダーの公衆トイレ使用についてSNSで炎上するなど、その受けとめ方はまだまだ揺れている面もあります。

これからの子どもたちに「性の多様性」を伝えたほうがいいとはわかっていても、ママパパはそういった教育を受けていない世代です。「今さら聞きづらいけど性の多様性を知ることはなぜ大切なんだろう」「実は私も子どもに教えられるほど理解していないかも」と戸惑ってしまうママパパもいるでしょう。

そこで、さまざまな識者がジェンダーや多様性について語った記事をまとめました。性の多様性への理解を改めて深めつつ、子どもに伝えるヒントになるかもしれません。

1)性の多様性とは? 子どもへの伝え方などを網羅的に学ぶ

まずは、「ジェンダーや性の多様性を知ることはなぜ大切なのか」を知ることから始めましょう。

昨今は、勇気を出して声を上げる人などによって、ジェンダーに関する課題がよく取り上げられています。「自分は困っていない」と感じている人もいますが、それは、「『関心がないから、課題が見えていないだけ』ではすませられないほど、誰にとっても必要」と医療ライター・及川夕子さんは言います。

大人がジェンダーを学んでいないと、「男の子だからスポーツさせたい」「女の子だから理系は苦手」のような、固定観念にとらわれた決めつけをしてしまう可能性も。大人が決めつけることで、その子本来の興味あることに挑戦できず、可能性を狭めたり、つぶしてしまいかねないと言います。

また、すべての人が当事者であることを意味する「SOGI(ソジ・ソギ)」という言葉にも触れています。「SO=Sexual Orientation(好きになる性・性的指向)」と「GI=Gender Identity(自分の心の性・性自認)」の頭文字を取った言葉で、性自認や性的指向にかかわらず、すべての性のあり方を示しています。SOGIを知ることで、自分も多様性の一員だと認識しやすくなるでしょう。

➡注目記事➡SOGIってなに? 親がジェンダー観をアップデートすると子どもがラクに生きられる

「10歳までに教えておきたい性教育」シリーズの第4回「ジェンダーと多様性」では、親世代が子どもにどう伝え、どう一緒に考えていくかを、TIPS(=コツ、ヒント)にまとめています。

伝え方のきっかけとしては、テレビ、アニメなどでLGBTQ+の話題が出ていたら「いろいろな生き方があるね」などと話しかけてみたり、一緒にLGBTQ+に関する本を読むこともおすすめだと言います。

「男の人なのになんで化粧をするの? スカートをはくの?」などと子どもに聞かれた場合の回答例もありました。

「誰にとっても自分らしく生きていけるのが一番だよね。こうあるべきって他人が決めるものではないし、正解はないんだよね。どんなセクシュアリティであっても、自分を無理に隠さなくてもいいし、恥ずかしく思う必要はないんだよ」

この優しくも核心にせまった言葉は子どもたちにわかりやすく響くのではないでしょうか。

➡注目記事➡10歳までの性教育 親は子どもに「性の多様性」をどう伝える? 専門家が徹底解説

2)「お人形遊び」で性の多様性を知ろう

遊びを通して、親子で「ジェンダーニュートラル」を学べる方法があります。

バービー人形の販売元のマテル・インターナショナル株式会社は、2019年にウィッグで髪型を変えることができ、洋服もカスタマイズできるジェンダーフリーシリーズをアメリカで発売しました。

これまでに発表してきたバービーの職業も大統領や消防士などさまざまあり、ブランドテーマである「“You Can Be Anything”(=何にだってなれる)」を体現していることがわかります。

また、株式会社エポック社も、シルバニアファミリーのお母さんからエプロンを外したり、キャラクターの趣味や職業に性別による偏りが出ないようにするなど、さまざまな配慮がされていると言います。

子どもにとって身近な存在のおもちゃがアップデートし続けることで、子どもが性別を理由に何かをあきらめることが少なくなるかもしれません。また、ジェンダーに限らず、「人は一人ひとり違う」ということを遊びながら自然と身につけられる良さがあります。

➡注目記事➡バービーやシルバニアファミリーが「性別の役割から解放」されたワケ

3)「英語表現」の変化で「ジェンダーニュートラル」を実感

ジェンダーニュートラルを英語の勉強から取り入れる方法もあります。

日本でも「看護婦」から「看護師」、「保母さん」から「保育士」になるなど職業の呼び方が変わってきていますが、世界では、さまざまな言葉がアップデートされていると言います。

例えば、旅客機の客室乗務員は「スチュワーデス/スチュワード」に代わる性差のない言葉として、「flight attendant」。これなら男女問わない表現になります。また、「he(彼)」「she(彼女)」の代わりに、「they(彼ら、彼女ら)」が性別を特定しない第三者を表現する単語として使われています。

「なぜtheyに変わったのか」というお子さんとのやりとりが、性の多様性について伝えるきっかけになるかもしれません。

➡注目記事➡「ジェンダーニュートラル」な最新英語表現【学校でも塾でも習わない ワザあり英語】

4)「昆虫の生態」からもLGBTQ+の悩みに寄り添える

文学を通じて学ぶ方法もあります。第64回講談社児童文学新人賞で佳作を受賞した2人の作家・五十嵐美怜さんと福木はるさんの対談です。

五十嵐さんの著作『15歳の昆虫図鑑』(講談社)は、昆虫オタクの中学生、蛍子(けいこ)が、クラスメイトが抱える悩みを優しく解きほぐしていくストーリー。蛍子がLGBTQ+の悩みを抱えるクラスメイトに、ひとつの体にオスとメスの特徴が混ざりあった「雌雄(しゆう)モザイク」のカブトムシの話をするシーンも登場します。

執筆の背景について、五十嵐さんは「壁にぶち当たって、悩んでいる子どもたちに『無理に頑張らなくても、立派になろうとしなくても、生きていればなんとかなるよ』と伝えたい」と言います。

一方、福木さんの著作『ピーチとチョコレート』(講談社)は、ルッキズムにとらわれた主人公の萌々(もも)が、ヒップホップとの出会いを通じて自信を持てるようになるストーリー。自著について、「悩んでいる子の肩を抱いて、一緒に伴走するような物語なのかな」と福木さんは言います。

2人の話から伝わるのは、悩んでいる子どもへの優しい目線。そっと寄り添ったり、元気づけたりと作品のアプローチは違いますが、子どもたちの味方になってくれそうな心強さを感じます。

➡注目記事➡「LGBTQ+」と「ルッキズム」 児童文学新人賞作家2人が「想い」を明かした

5)「男女共用水着」開発秘話は“未来”を描く

学校の水泳の授業で使われるスクール水着からも、多様性を学ぶことができます。

スクール水着は、一般的には男児はトランクス、女児はワンピースタイプと性別で分かれます。ひと目で体の性差がわかることに悩む性的マイノリティの子どもたちのために、水泳・学用品メーカーのフットマークは、ファスナー付きの長袖のトップスとパンツタイプがセットになった「男女共用セパレート水着」を発売しました。

いざ発売してみると、体型を隠したい、傷などがあって肌を露出したくないと考える子どもにも幅広く受け入れられたと言います。「性的マイノリティの子どもたちの悩みを解決することで、ほかの子どもにとっても着やすい水着になった」というこのエピソードは、性の多様性が当たり前のように受け入れられる未来の世の中を描いているかのようです。

➡注目記事➡【スクール水着】はジェンダーレス&肌見せ少なめ 「男女共用セパレーツ水着」400校以上が導入 生徒に大人気のワケ

6)「パパだけど、ママに」 多様な家族の形を知ろう

最後に紹介するのは、ある家族のお話です。

日本テレビの映画プロデューサーの谷生俊美さんは、39歳のころに女性として生きることを決めました。今は、谷生家の「ママ」として、パートナー女性の「かーちゃん」と、娘の「ももちゃん」の3人で暮らしています。

谷生さんの著書『パパだけど、ママになりました 女性として生きることを決めた「パパ」が、「ママ」として贈る最愛のわが子への手紙』(アスコム)は、未来のももちゃんに宛てたもの。ももちゃんが思春期を迎えるころに、家族の形に疑問を抱いたり、嫌な思いをするかもしれないことを考えて書いたと言います。

「かーちゃん」との馴れ初めや家族の何気ない日常を語る谷生さんから、家族の形は違っても、子を思う親の気持ちの強さや温かさに変わりはないことが伝わります。

➡注目記事➡男や女にとらわれず夫婦になり「ママ」に トランスジェンダー谷生俊美さんの3人家族とは?

谷生俊美さんインタビューの3回目「ジェンダーと多様性編」では、谷生さんが家庭で行っているジェンダー教育や多様性の伝え方について聞きました。

トランスジェンダー当事者として生きる谷生さんは、映画や絵本などのコンテンツを通じて、ももちゃんにジェンダーや多様性を伝えていると言います。

「子どもが自分の目で見て感じたことが、空気や水のように染み込んで吸収されることで、自然と腑に落ちていくのではないでしょうか」という言葉から、子どもを信頼すること、一人の人間として尊重することの大切さを教わりました。

また、記事の後半では、「親子で多様性を学ぶのにおすすめの映画」を年代別に紹介してもらっています。「今日はどの作品を見る?」と親子で楽しみながらジェンダーや多様性に触れてみてもいいかもしれません。

➡注目記事➡「ママ」になったトランスジェンダー 谷生俊美さん 愛娘へ伝える多様性

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ジェンダーや性の多様性を学び、子どもに伝える方法は、一つではありません。どのアプローチがいいのかは、お子さんの年齢や性格、親子の関係性によってさまざまです。

まずは、ママパパが記事を読んで「予習」をしてもいいし、記事をきっかけに親子で一緒に考えてみてもいいでしょう。これらの記事が、ジェンダーや性の多様性を考える、いい機会になりますように。


文/畑菜穂子

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はた なおこ

畑 菜穂子

ライター

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona

1979年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーに。主にWEBメディアで活動中。子育て、性教育、グルメ、企業の採用案件などの取材・執筆を行う。多摩地域で、小学生の娘(2012年生まれ)、夫と暮らす。 Twitter @haricona